騎士団長殺し


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騎士団長殺し  第1部・第2部

村上春樹  新潮文庫

 

■ざっくりいうと

肖像画家である主人公が、訳あって一時過ごした小田原の山の上の家付近で巻き起こる、とにかく不思議な物語。

隣人の免色さん、反対側の隣人であるまりえさん、家主である雨田氏、そして雨田氏が描いた騎士団長、白いスバル・フォレスターの中年男…すべての登場人物が何らかの意味を持ち、主人公に不思議な体験をもたらしていく。

 

■胸にささった文章

生きている間は精一杯生きます。自分に何がどこまでできるかを確かめてみたい。退屈している暇はありません。私にとって、恐怖や空虚さを感じないようにする最良の方法は、何よりも退屈をしないことなのです。(第2部 遷ろうメタファー編 上 p183)

 

■感想

いわゆるハルキストまではいかないが、春樹さんは好きな作家の1人である。出会いは確か大学生の頃、新潮文庫のyondaグッズが欲しくて「海辺のカフカ」を手に取ったのが始まり。当時は衝撃というか感動というか、過去の春樹さんの本(エッセイを含む)を手当たり次第読んで、体内に吸収していった記憶がある。

春樹さんの小説にはいつも決まったキーワード(井戸(今回は地中の穴だったが)だったり、壁をすり抜けられたり)が描かれており、また、恐らく1Q84以降のキーワード(カタコトで話す女の子だったり、間接的な妊娠だったり)が描かれていて、古くから読んでいる身としては、懐かしくもあり、またこう来たか!と思わせる感じだった。

最後を読んだところで、「あれ?伏線が回収されていないんじゃない?」と思わせるところが新鮮だった。思わずもう一度読んでしまった…

それにしても、春樹さんの描く料理のシーンは、とてもシンプルなのに何故とても美味しそうに感じるのだろう…美味しいコーヒーとトーストが食べたくなる本でもあった。